第5回<貧困を考える【SDGs目標1の実現】(後編) > 連載「一緒に学ぼう! SDGs 」一緒にSDGs を学び、取り組みに活かしていきましょう!

第5回<貧困を考える【SDGs目標1の実現】(後編) > 連載「一緒に学ぼう! SDGs 」一緒にSDGs を学び、取り組みに活かしていきましょう!

SDGs(持続可能な開発目標)の取り組みは、労福協の理念・ビジョンである「すべての働く人の幸せと豊かさをめざして、連帯・協同で安心・共生の福祉社会をつくる」、「貧困や社会的排除がなく、人と人とのつながりが大切にされ、平和で、安心して働きくらせる持続可能な社会」とも合致します。
教えてくださるのは山形大学地域教育文化学部の村松 真 准教授です。

プロフィール
金山町役場・農林水産省勤務を経て、山形大学地域教育文学部准教授兼東北創生研究所長、現在に至る。
博士(農学)。専門は、地域計画学・地域づくり等。その他、県・市町村・NPO・民間団体等、各種役職を歴任。

SDGsの実現⑤
貧困を考える【SDGs目標1の実現
】(後編)

前回は、世界の貧困、日本の貧困について考え、生活保護の観点から、高齢者世帯の貧困、母子家庭世帯の貧困、障がい者・傷病世帯の貧困について考えました。今回は後編として、これら3つの貧困についてさらに考えてみたいと思います。

令和2年(2020年)の国勢調査では、一般世帯数が5570万5千世帯であり、前回調査と比較すると237万3千世帯が増加し、核家族化が益々進行していることが分かります。また、65歳以上の老年人口も前回調査より増加しており、総人口の28.6%を占め世界一になっています。

老夫婦の姿

令和元年(2019年)の厚生労働省の資料によると、65歳以上の単身世帯で、年間150万円未満の世帯は11.6%に達し年々増加しており、平均所得は約190万円でした。さらに、同省の「高齢者の生活実態」では、60歳代の夫婦で安定した生活を送るためには、年額で284万4千円が必要だと発表されています。

そのため、国策として、退職年齢の引き上げ、高齢者の再雇用等を進めてきましたが、高齢者の低賃金、公的年金額の引き下げ、受給年齢の引き上げ、核家族化の進行、少子高齢化の進行、若年世代の年金未納等により、年金基盤の弱体化が懸念されます。高齢者が安定した暮らしを確保するためには、セーフティネットの充実、社会環境の整備・改善等に取り組む必要があります。

母子家庭の貧困に対する支援制度としては、生活保護をはじめ多種多様な制度がありますが十分とは言えません。現在の日本では、子供の7人に1人が貧困状態であり、貧困率はOECD諸国では最悪です。特に、子供の高校・大学進学が迫ってくると、深刻な問題として現れてきます。

対策としては、奨学金制度がありますが、進学後の生活費負担、卒業後の返済等を考えると十分ではありません。最近では、給付型の奨学金制度も登場してきましたが、まだ一般学生に対する支援策にはなっていません。

このような母子家庭の貧困問題の根底には、男女の賃金格差があると思います。令和3年の厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、男性の賃金を100とした場合に女性は75でした。この格差を是正するために、出産前後の負担の軽減、職場での機会(チャンス)平等、配属先及び人材育成等の平等を確保することが重要になってきます。

障がい者・傷病世帯の貧困問題への対応は、生活保護、障がい者年金、就労支援等の制度があります。傷病世帯では、病状の回復及び安定を待って取り組む必要があります。障がい者では、関連する制度を活用し、就労支援を受けることが大切です。

落花生の作業に取り組む利用者

しかし、現実的には、障がい者・傷病者については、制度の活用や支援だけでは十分ではありません。そのため、就労施設の利用が重要になります。その場合、利用者に合った就労内容であるかが大切です。特に、工業製品の製造よりも、できれば農作物の栽培・加工のような農福連携が有効であると思います。

貧困の問題は、多種多様であり、解決のためには制度、政策、互助等、様々な取り組みがあると思います。大切なことは、対象となる貧困を十分に理解し、その解決のために何ができるかを具体的に考えることです。次回は、陸の豊かさを守ろう【SDGs目標15の実現】について考えていきたいと思います。

SDGsの実現の①第1回<SDGsの概要と取り組みヒント>
SDGsの実現の②第2回<SDGsの取り組み方法と地域化>
SDGsの実現の③第3回<SDGsの持続可能な発展(Sustainable Development)>
SDGsの実現の④第4回<貧困を考える【SDGs目標1の実現】(前編)